記事を確かめてみる。(その2)

utumi_k氏の記事*1に対して本格的に突っ込んでみます。

アニメ版の方は、導入部で三話も費やして退屈、いかにも説明っぽいシーンが多いなどといった指摘が既に多数。

前回も書きましたが『導入部で三話も費やして退屈』と言う意見は当方は寡聞にして知りません。どなたか該当する多数の記事をご存じでしたら教えてください。
utumi_k氏は最初から勘違いしているようですが導入部は第二話*2までです。第三話の冒頭、セイバーがランサーと戦いを開始するところから本編であるシロウが絡んだ聖杯戦争が始まります。utumi_k氏の不思議脳驚異のメカニズム故か導入部がどこまでなのか全く理解できないようです。第1話、第二話で基本シロウの周りがメインになっていた事で理解できそうな物ですがさすが「常識ある大人」のutumi_k氏です。

まず初めにいきなり、原作の宣伝でもよく出されていたセイバーの美しく印象的な登場シーンを出し、そこから数日前に戻るというようにしている。アニメ版の、なんだかよくわからないがありがちな戦いと爆発をしていただけの第一話冒頭より、はるかにセンスがいい。

原作の冒頭シーン*3が素晴らしいのは間違いありませんがアニメFateの冒頭シーンは『なんだかよくわからないがありがちな戦いと爆発をしていただけ』ではありません。冒頭の戦いは10年前の聖杯戦争で本気のサーバント同士が戦うと只では済まない*4状況を見せています。前回の聖杯戦争が『なんだかわからないありがちな戦い』とはutumi_k氏の観察眼は100円ショップで売っている歪んだ天眼鏡より低いレベルと言えるでしょう。utumi_k氏的には『なんだかわからないありがちな戦い』でサーバントの強力な力*5を、『爆発をしていただけ』で旧冬木市の壊滅とただ一人生き残ったシロウを描き、そしてふたつでもってシロウが「誰一人傷つけないスーパーマンになる」という現在も続く決意をした事に繋がっている重要な説明になっている事に全く気付かずに原作の表面だけ見て『はるかにセンスがいい』と来るのですから一般的なオタクからすれば「これだからヲタクは。」と言うしかありません。

初めは士郎では無く凛の視点から始まる。そうして聖杯戦争のための魔術や必要知識、サーバント召還等の準備と作業を順番にしていくる凛の言動を通して、凛の個性や話の面白みを持たせながら、聖杯戦争関連の説明を効果的にしていく。

utumi_k氏は自分の記事の頭のところで『いかにも説明っぽいシーンが多いなどといった指摘が既に多数。』と書いていますが原作のアニメより良いところの説明と完全に矛盾しています。もしかすると「説明っぽいシーン」は駄目で「説明そのもの」ならOKなのでしょうか?

聖杯戦争の説明を、使い慣れない電化製品の使用方法の説明とするなら、アニメの方はその機械の事をほとんど知らない素人(士郎)が、いきなり長ったらしい説明を聞かさて、機械を使う以前にその説明に振り回されているようなもの。それに対し、原作の方はある程度知っている者(凛)が、使い慣れない新しい機械の操作手順を、順番に動かしながら着実に確認していくような物。後者の方が優れている。

utumi_k氏は原作に合わせて記事を書いていますがアニメFateではこの辺りは第1話にないのでこの部分は後の記事に譲ります。もちろんutumi_k氏の例え話が訳が分からないからではありません。ええ、ありませんとも。

凛のサーバント召還儀式シーンでの魔術という物の具体的な描写と派手な見せ場。アニメの方では士郎が初歩的な魔術の応用で機械修理をしていただけ......

凛のアーチャー召還はアニメFateでもちゃんと描かれています。
アニメFateでは10年前の回想が終わったところでキレイによる新たな聖杯戦争の開始が宣言されます。その時のキレイのセリフで聖杯戦争が何なのか視聴者にはだいたい分かります。そしてキレイの宣言に続き凛によりアーチャー召還が描かれます。召還術の発現の描写は派手と言うほどではありませんが問題なくそれと見えます。utumi_k氏は魔術を「派手な見せ場」と捉えているようですが魔術が派手でなければならない*6理由はありません。
utumi_k氏の言う『初歩的な魔術の応用で機械修理をしていただけ』というのはAパートでシロウがストーブを直していた所ですがこのシーンはシロウには人と違った特殊な能力がある事の説明です。どうもutumi_k氏にはこれが魔術の見せ場に見えるようですがただの説明が魔術の見せ場だと思えるutumi_k氏の不思議脳驚異のメカニズムには着いていけません。これだからヲタクは。

凛のミスで不完全な召還をされた事による、アーチャーと凛とのドタバタと和解の面白さ。アーチャーの個性も面白く見せている。それを通してサーバントとはどういう物かも適切に説明。橋のネジの数を数えられる事を自慢していただけのアニメ版第一話のアーチャーとは雲泥の差。

utumi_k氏が作劇という物を理解していないのは明白です。何が物語にとって重要なのか?を理解していないのでこういった偉そうな話が出てきます。
アニメFateでの凛の立ち位置は魔術師の(義理の)息子のくせに魔術師を継いでいないほぼ素人のシロウの対局にいる本当のプロの魔術師です。凛がミスをしてアーチャーが不完全な召還をされるとかドタバタして和解とかはアニメFateでは全く重要ではないのです。重要でない事はわざわざ描く必要がありません。凛の魔術師としての能力については如何にもカッコよく召還の儀式をして「最強のサーバントを引き当てた」とニヤリとしながらどうやら上手くはいかなかったらしい事はアーチャーが屋根を突き破って落ちてきた事、凛の口ぶりからするとアーチャーでは不満らしい事*7により「なんとなく」分かり、その事によって実は凛は大した魔術師ではない事を暗に示しています。
アニメfate第1話ではサーバントに関する説明はほとんどありません。それに気付かずに原作と比較して『(原作のサーバントの説明は)橋のネジの数を数えられる事を自慢していただけのアニメ版第一話のアーチャーとは雲泥の差。』というのは爆笑物です。アーチャーが橋のボルトの数を数えられると言った下りは第1話ラスト直前にあります。しかしそこに行くまでの話が不思議脳驚異のメカニズムもしくは不思議フィルターが邪魔をしてutumi_k氏には見えません。凛は他のサーバントの動きを知るために授業をさぼって学校の屋上から索敵しますがアーチャーのクラスの力には他のサーバントを遠くから察知する能力*8がありません。そこでアーチャー*9に合わせて凛は街中をうろつき回る事になり最終的にやってきたのが新市街を一望できるビルの上です。「最初からここに来ていれば歩き回らなくて済んだろうに」と不満を言うアーチャーに「ここから見えるのは全景だけ。実際の場所に行かなければ冬木市の仕組みは理解できない。」と凛が返します。そのセリフに対しアーチャーが言ったのが「アーチャーのクラスは伊達じゃない。あの大橋のボルトの数くらいは数えられる」というセリフです。このセリフはサーバントの能力の自慢ではなくサーバントのクラスとしての能力の高さを示しているのです。つまりサーバントにはクラスがあり*10、クラス毎に秀でた能力があるという説明でもあるのです。自慢していたと言えば確かに自慢ですがutumi_k氏、本当に見る目がありません。そえでいてあれだけ偉そうに物を語って意見の合わない他人を馬鹿呼ばわりして憚らないのですから「常識ある大人」って最低です。

原作のプロローグでは凛やアーチャーのキャラや言動のウィットも面白いのに、アニメ版の導入編では聖杯戦争の部外者のタイガー(藤村大河)ばかりが際立ってキャラが面白い始末。最初から士郎視点だかといって、キャラを立たせる優先順位を取り違えているのでは。

アニメfateの本編は第三話から始まります。それまでの二話では主人公であるシロウくんは聖杯戦争にはまだ関わって*11いません。主人公が関わっていない以上は聖杯戦争そのものに関するキャラを優先する意味が無く逆にシロウのそれまでの日常を描く上で藤村先生や周りの友人達を優先して描くのは当たり前です。何が重要なのか全く理解していないだけあってutumi_k氏は自分が優先順位を間違っているとは露程も思っていないようです。これだからヲタクは。

アニメ版の第一話も、無理に最初から士郎主役にこだわらず、無難に原作をトレースするだけでも大分マシになったはず。

実際に原作をプレイしていない身の当方がこう言うのも何ですが、原作のプロローグをトレースするとして最低でもプロローグ部分は終わってないと何が何だか分からない作品になります。21分*12で収まるんですか、utumi_k氏? それで誰が主役か、どんな物語がこれから展開するかがちゃんと何も知らない視聴者に理解できるような「掴み」になるんですか? 無理だと思います。utumi_k氏が言うように原作をトレースしただけなら主役は凛とアーチャーになり、冒頭登場したセイバーは誰だか分からず、魔術やサーバントの説明ばかりで話は進まず何がやりたいのか、何をやっているのか全く分からない作品になるはずです。そんな作品を作るプロがいる訳がありません。これだからヲタクは。(つづく)

*1:http://d.hatena.ne.jp/utumi_k/20060213/p1

*2:ラストでセイバーが登場します

*3:当方は未プレイのため知りません。原作に関してはutumi_k氏の記述を信じます。utumi_k氏の不思議脳からすれば信じられるか疑問ですが。

*4:この時のセイバーvsアーチャー(?)で冬木市の旧市街は壊滅。生き残ったのはシロウだけです。

*5:戦いの背景は破壊を尽くされた旧冬木市街。

*6:ロードス島戦記」以前の魔術、魔法描写は技の名前を叫んで派手なエフェクトがあってという如何にもそれらしいものですがロードスのそれは本当の魔法らしさがありました

*7:凛はセイバーを引き当てたつもりだったらしいセリフが次回以降にあったと思います。確認してませんが。

*8:この能力があるのはキャスターで、後にその描写が登場します。

*9:アーチャーの目は鷹のそれであると第8話でセイバーが語ります。

*10:アーチャーは弓兵。だから鷹の目と呼ばれるように視力が良い。ここでのクラスの説明がランサーとの戦いのセリフで生きてくる。

*11:回想シーンで分かるように実は10年前から関わっていたのですが本人は気付いていません。

*12:現在のTVアニメは大雑把に言えばOP/ED/予告を合わせて約25分です。本編のみなら約21分30秒程度になります。